【いい服の日】秋を纏う
投稿 / 初出 Twitter
「いい服の日」は株式会社トンボが制定した日とのこと。トンボと言えば学生服。そう、本当はユニフォームの服を指すようだ。こんな洋服のイラストで申し訳ない。
ところで山々が秋色になることを「染まる」「色付く」と呼称するが、ふと妙だなと思った。古来より日本の日常着であった着物では白糸を別の色に変えることを「染める」と呼称するように、この言葉ではあたかも第三者によって山の木々たちの色が変えられている印象があるからだ。
そもそも、葉が赤や黄に変化する仕組みを考えると「染まる」「色付く」は正しい表現とはいえない。黄色になる葉は、もともと緑色と黄色の色素があり、冬が近づくと緑の色素が減少するために黄色が目立つようになる。強いて例をあげると、昼間には太陽の光(緑色)で見えない星々(黄色)が、夜になると瞬きはじめるのと似ているだろう。それに対して赤い葉はもともと赤の成分はなく、寒くなるにつれて糖分が赤い要素に変化するためだという。これらを考慮すると自発的に色が変わることを意味して「黄色が目立つ」「浮かび上がる」や「赤色に変化する」というほうが言葉的には合致している。色が変わるだけのことなら「塗る」であってもよかったはずだ。が、しっくりはこない。「染まる」のほうがより風流に奥ゆかしく感じるのはなぜだろう。こういった表現は我々の奥深くに刻まれているのかもしれなく、なかなか払拭することはできなさそうだ。
紅葉は日本の特権ではなく、寒くなる地域のカナダやイギリス、ドイツなどでも美しいと聞く。その地域では青い葉から紅葉へと変化していくさまを何と表現するのだろう。その言葉から、国の感受性が分かるような気がする。
絵のことに少し触れておくと、テクスチャとして使う落ち葉のために並木道を探して見知らぬ駅を降りて歩いた。綺麗な落ち葉を探して歩いていると、いつのまにか隣駅。こんな散策もたまには悪くはない。