黄色
投稿 / 初出 Twitter
イラストの初出は2016年9月23日、たまたま星野源の「恋」MVを観て、衣装のかわいらしさから描いたもの。まさかその一か月後、ドラマと共に楽曲が社会的な大ブームを生み出すとは思わなかったが、先見の明とはこのことを言うのだろうが。きっと私のデザイナーとしての本能が何かを感じとったに違いない。むッ、今年はナタデココとエリマキトカゲが再ブームになる(突然の当たらない未来予想)。
ところで星野源が日本的なポップスを「イエローミュージック」と称しており、このMVもテーマカラーが黄色のようだ。いったい「黄色」とはどんな色なのだろうか。
黄色は単体で視認性が高い色合いで、とある本によると「自然界において熟れた果実を見つけるために視覚が発達したのではないか」との記述がある。その法則を取り入れたのだろうか、日本では消防車といえば赤(朱色)だが、アメリカでは黄色い消防車も存在しており、日本ではこれまた赤色のポストも、フランスやギリシャなどヨーロッパ圏では黄色が多い。消防車の場合、黄色が警戒色でもあることを利用しているのだろう。
黄色は黒と合わせるとさらに警戒色としての印象が強くなる。自然界でも虎模様、蜂模様としておなじみだ。いま電車に揺られながらこの文面を打っているのだが、ホームの案内板や点字ブロック、電車の出入口付近の足元、つり革などが全部黄色である。壁に貼ってある未成年飲酒禁止の啓蒙広告も黄色地に黒文字で、このカラーリングのおかげで強烈なメッセージ性がある。関西圏ではタイガースカラーとしてお馴染みだが、最近のタイガースグッズの女性向けはレモン色に水色などパステル調にシフトしているものがある。やはり黄色と黒ではファッションとして力強すぎるのだろう。
中国の隋・唐の時代では皇帝を「黄帝」と呼称し、庶民が黄色い服を禁止するなど、黄色は高貴な色として扱われていたようだ。ただ現代の中国の俗語では、日本でいう「ピンク」に近い使われ方、いわゆるピンク映画とかピンク街と同義として用いられることもあるという。たとえば日本で言う「青二才」も、「黄口人」と言う。黄色の地位が一気に低下してしまったのは、一説によるとアメリカからのマイナス的観念が流入したようだ。ちなみに日本では未だに絶対禁色というものが存在しており、天皇の袍の色である「黄櫨染」がそれである。ただこの場合、黄色というより赤みが強い褐色である。
ウエディングドレスといえば、純粋を現す純白が定番だが、これは近年において生まれた価値観で、ヨーロッパ圏ではそもそも白色はあまり用いられない色であった。ドレスの発生である古代ローマにおいてウエディングドレスは、花で染められた黄色と決められていたという。歴史には詳しくはないが、当時の金に対する価値観や、染色技術などと相まって黄色こそふさわしい色となったのだろうか。昨今の結婚式では白以外のカラフルなドレスを見ることもあり、黄色のドレスも珍しくはなくなった。こうやって色に対する価値観も時代で変わっていく点はデザイナーとしても心にとどめておきたい。
話を最初に戻すと、「イエローミュージック」は「日本的な音楽」と言及しているため、日本=黄色人種からの言葉繋がりであろう。日本人とイエローという関連性では、イエローモンキーや黄禍論などネガティブなイメージも根深い。そんなイエローという言葉をあえて使ったのはけっして卑下ではなく、上でつらつらと述べたような単色でも輝く素晴らしい色であるということを伝えたいためではないだろうか。あと「恋」なので警戒するように、なんて意味も含まれていたり(なわけはないか)。
ところで黄色は興奮色でもあるそうだ。ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』という名作ミステリーがあるが、この黄色い部屋というのは少女の寝室。興奮色で塗られた部屋で少女はぐっすり眠れたのだろうか。いやまあ、彼女は殺されちゃっうんだけど。