巨大構造物と少女シリーズ6「在りし日の空」
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ドイツの軍人・ツェッペリン伯爵に手によって、硬式飛行船が初めて大空へと飛行したのが1900年7月2日。ただしこのイラストの飛行船はLZ1と言われる初期型ではなく、世界一周旅行にも成功した「LZ127(Graf ZEPPELIN)」という後期のものを描いている。全長236.6メートル、直径約30メートルという巨体は、例えると高さ243メートルの東京都庁第一本庁舎の片側半分。つまりはビル一個分まるまるが空に浮かんでいることになる。まさに巨大構造物として扱うにふさわしいと考え、今回の題材とした。
その独特の丸みを帯びたフォルムや緩やかに旋回する動きは、どこか可愛げがあり優雅である。しかし、第一次世界大戦では積極的に戦闘兵器として用いられていた。当時はまだこの半分程度の150メートル程度ではあるが、爆弾や焼夷弾を投下し、イギリス本土にダメージを与えた。ほどなくして戦闘機が登場し、殺戮機としての飛行船はすぐにお役御免となったようだが、敵戦機の巨体が大空に幾つも浮かんでいるのは畏怖の対象であったことだろう。
じつは2016年末まで日本の上空にも飛行船が浮かんでいたのをご存じだろうか。全長39mほどのコンパクトさで、生命保険会社のメットライフ生命が運航しており、船体の横にはスヌーピーが大きく描かれている。その名も「スヌーピーJ号」。何もないはずの空にふわりと浮かんでいる姿は、大戦のそれとはちがう、見る人を笑顔にさせるものだった。私も大阪で何度か目撃し、子供たちとはしゃぎあったのを覚えている。
ふと思い出したが、私が小学生のころはセスナ機が昼の空を旋回しており、近所のスーパーの開店をけたたましい音量で宣伝していた。聞こえやしないのに、地上から声を張り上げて大きく手を振っていたものだ。まだ一部の地域でも定期的に見られる光景らしいが、法令で飛べない地域もあるらしく、どうやら今となっては騒音問題になりかねないようだ。
空を見上げる機会もめっきり少なくもなってきたこの頃、今日くらいは在りし日の空に想いを馳せてみよう。